甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、大部分がバセドウ病です。
・甲状腺が腫れる
・精神的にイライラする
・よく汗をかく
・心臓がドキドキして脈が速くなる
・暑さに弱くなる
・手がふるえる
・眼球が突出する
等の症状が現れます。
これらの症状は、甲状腺ホルモンの過剰分泌に由来しますが、どうして甲状腺機能亢進症になるのか原因は不明です。
治療には大きくわけて①薬をのむ ②手術を受ける③放射線ヨードをのむ の3つの方法があります。
これらのうちどれが一番良いのかは、一概に断定出来ません。一番無難なのは、抗甲状腺剤と呼ばれる薬を毎日服用する①の方法です。しかし、場合によっては②や③の方法を取らざるを得ない時もあります。以下、治療法の概要です。
①抗甲状腺剤の内服療法
抗甲状腺剤は全ての患者さんに用いることが出来ます。
甲状腺機能亢進症のために特別な食事療法をする必要はありません。
薬疹や白血球減少が起こることがあります。
約2年間で半数の方が治癒に至ります
ただし再発する場合もあります。
②手術療法
治りはいいのですが手術そのものの苦痛や不安があり、甲状腺の手術に習熟した外科医を紹介してもらうことが必要です。
手術後も定期的に診察を受ける必要があります。
③放射線ヨード療法
放射線ヨード療法のカプセルを服用する簡単な方法です。
放射線の影響は無視できませんので、出産予定のある人にはすすめられません。
治療後も定期的に診察を受ける必要があります。
甲状腺機能亢進症の治療の主体は抗甲状腺剤の内服です。
薬の服用をはじめて数日から数ヶ月のうちに様々な副作用が起こることがあります。
副作用があれば、薬の種類を変えるか他の治療法に切り換えることになります。
皮膚の発疹(薬疹)
白血球(顆粒球)の減少
肝機能障害
喉の痛み
発熱
食欲低下 など
抗甲状腺剤の服用中に発疹が出たり、喉が痛くて高熱の時や、食欲が低下した時には、直ちに薬を中止して診察を受けてください。血液の検査をして副作用かどうかを調べる必要があります。
抗甲状腺剤は効果が現れるのに時間がかかりますので、自分で量を加減してのむ薬ではありません。
必ず指示された量の薬をきちんと内服してください。決して自分で量を増やしたり、減らしたり、中止してはいけません。薬が効きすぎた時には、筋肉が硬くなったり、頭痛、肩こり等が起こります。また、足や手の筋がつったりすることもあります。このような症状が現れたら必ず診察を受けてください。
甲状腺機能亢進症は比較的若い女性に多いため、患者さんが妊娠したり出産したりする機会も少なくありません。正常な人でも妊娠や出産に際しては神経質になりますが、甲状腺機能亢進症では病気そのものにイライラがつきものですので、患者さんが妊娠した時や妊娠してからこの病気であることがわかった時に、余計に神経質になることがあります。
しかし、甲状腺機能亢進症では妊娠すると症状は軽くなることもあり、甲状腺機能亢進症の人から奇形児が多く生まれるという事実もないため、もし妊娠しても中絶の必要はありませんが、できることなら、甲状腺機能亢進症を治しておいてから妊娠した方がよいでしょう。また、出産後も抗甲状腺剤が必要となることがあります。この場合母乳で育てることができませんので、人工栄養で赤ちゃんを育てることになります。
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌される量が減少する病気です。甲状腺ホルモンが不足した状態が続くと、体がむくみ、動きが不活発になります。また、無気力で物忘れがひどく、寒さがこたえるようになります。
症状 徐々に現れるのが特徴です。症状の多くが発病して数か月から数年後にはっきりしてくるため、患者さん自身や家族もその変化に気づかず、久しぶりに会った友人などから異常を指摘されることもあります。
原因 慢性甲状腺炎(橋本病)です。慢性甲状腺炎のうち一部の人に甲状腺ホルモンの分泌が少なくなるため、機能低下症が起こります。
慢性甲状腺炎(橋本病)と診断されたら、自覚症状がなくても1年に2度くらい診察を受け、甲状腺ホルモンが欠乏していないかどうかを調べることが必要です。また、甲状腺機能低下症は、慢性甲状腺炎(橋本病)の他に、甲状腺の手術や甲状腺機能亢進症の放射線ヨード治療を受けたあとにも発症しますので、手術や放射線ヨード治療を受けた人も、定期的に診察を受けることが必要です。
甲状腺機能低下症では、不足した甲状腺ホルモンを補うため毎日一回、甲状腺ホルモン剤を服用する治療を行います。この薬は体内で産生される甲状腺ホルモンそのものですから、適量を内服すれば副作用は全く心配ありません。また、妊娠中の人や授乳中の人も内服可能で、高血圧や胃の薬などと一緒に服用しても安全です。
甲状腺ホルモンの内服をはじめても、症状が完全によくなるまでに約2ヶ月ぐらいかかります。また、薬をのむのを忘れたり、薬の服用を中断しても、すぐには機能低下症の症状が現れないので病気が治ったものと思いこみ、薬を中止してしまう人が少なくありません。しかし、症状がないのと病気が治ったのは違います。決して勝手に薬をやめてはいけません。